基調講演
まえの てつひろ
前野 哲博 氏
筑波大学大学院人間総合科学研究科 地域医療教育学
教授
「地域医療の確立のために必要な医師・薬剤師連携のあるべき姿」
〜一般用医薬品の果たすべき役割〜
 急速に進む高齢化、医療の高度化などを背景として、医師不足が急速に進み、大きな社会問題となっています。この問題の根源は、医療サービスについての需要と供給のバランスが崩れていることにあり、最近の医師不足対策は必ずしも本質的な問題解決につながっていません。たとえば、ある自治体が医師確保に奔走し、それが成功したとしても、医師の絶対数が不足している以上、それは他の地域を医師不足に陥らせるだけです。さらに医学部の定員増も養成までに8年以上が必要となるため即効性はなく、医療の集約化も供給の効率化という意味では有効な反面、医療機関へのアクセスが犠牲になってしまいます。
 国民がどこに住んでいても安心して医療を受けられるためには、医師問題の根本に立ち返り、需要の抑制と供給の増加に本格的に取り組むべきであると考えます。その際、本来医療が必要なのにその機会を制限したり、供給を優先するあまり極端に医療の質を下げたりしない配慮が必要なことはいうまでもありません。
 この難しい問題を解決するうえで、薬剤師によるセルフメディケーションを含む「セルフケアの支援」と「適切な受診推奨」への期待は大きく、また、医療機関よりも地理的・心理的・経済的にアクセスの良い薬局等で、住民が健康について何でも気軽に相談でき、適切な生活指導を受けることができれば、結果的に医師の業務削減につながるはずです。
 この仕組みを医療再生の方策として活用していくためには、窓口対応に当たる薬剤師(登録販売者)が症候診断に対する深い知識を持ち、症状を訴える患者に対して、緊急性を含めて適切に判断できる能力を持つことが前提となるでしょう。「症候診断」という言葉は、医師が行うものというイメージが強くありますが、薬局等における一般用医薬品の中での薬剤選択や、医療機関への受診推奨の判断も、広い意味では症候診断であり、薬剤師(登録販売者)にとっては日常的に行われていることなのです。従って、症候診断のスキルをさらに深く学ぶことは、医療再生のみならず薬局等における通常業務の質の向上にもつながることなのです。
 まだ現状では、薬剤師を対象とした症候診断に関する教育は遅れていると言わざるを得ません。今後、医師と協力しながら、体系的な教育プログラムの開発・普及を進めていく必要があるでしょう。

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