講演1
やすかわ  たかし
安川 孝志 氏
厚生労働省医薬・生活衛生局 総務課
薬事企画官/ 医薬情報室長
「地域包括ケアシステムにおいて薬剤師に期待すること」

 今、薬剤師の役割が問われています。特に薬局に関しては、調剤を中心とした業務を行っており本来の機能を果たしていないのではないか、患者が医薬分業のメリットを実感していないのではないか、といったことが指摘されています。
 一方で、薬の大量処方や残薬の問題などがあり、安全かつ有効な薬物療法についての情報と共に、健康寿命の延伸に向けた取組も重要です。
 そのような課題を解決するためには、他職種と連携しつつ薬剤師が専門性を発揮し、患者や住民のために何ができるかを考えながら業務を行うことが求められており、薬局、医療機関、医薬品の販売業者など活躍の場所を問わず、薬剤師が一丸となって取り組むことが必要です。
 厚生労働省では「患者のための薬局ビジョン」をとりまとめ、かかりつけ薬剤師・薬局の取組を進めていますが、今後の薬剤師・薬局のあり方に関しては、制度改正を視野に入れた検討を厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で進めているところです。
 10月17日から10月23日までは「薬と健康の週間」であり、正しく薬を使用することの大切さを多くの方に知っていただくための啓発週間です。本日のシンポジウムやこの啓発期間を機会に、薬剤師のみなさんが、地域で住民のために取り組むべき業務を考えるきっかけになることを期待します。

講演2
こうの   のりこ
河野 紀子 氏
日経ドラッグインフォメーション 編集記者
「対人業務に力を注げるチーム作り」

 2015年に厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」が発表されて4年。そこでうたわれた「対物業務から対人業務へ」という流れは、想像以上のスピードで浸透している。直近2回の調剤報酬改定でも、それを印象付ける項目や算定要件が盛り込まれ、もうその方向に進まざるを得なくなっている印象だ。
 昨年、この場で、薬局がこれまで以上に地域や患者に向けて情報発信していくことが重要と述べたが、今回はその対人業務を進めるための基盤、チーム作りについて、取材先の薬局経営者や管理薬剤師の話をヒントに、考えてみたい。
 チーム作りには、まず薬局内、会社内の雰囲気や風土を進化させていくことが重要となるが、そう簡単ではない。これまで通りの対物業務中心の業務を行っていても「まだ大丈夫」と思うからだろうか。だが、現場では変化に対応するために、ハード面や、ソフト面の“投資”をする動きが出てきている。特にソフト面では、2019年4月2日に出された厚労省の通知「調剤業務のあり方」がきっかけとなり、非薬剤師のスタッフをどう巻き込んでいくか、既に試行錯誤が行われている。
 さらに、もう1つの視点として、地域の医療職種との関係づくりも、対人業務を充実させるチーム作りの上で重要なキーワードになっていく。その取り組みを紹介したい。

講演3
ごとう   てるあき
後藤 輝明 氏
株式会社ツルハホールディングス 取締役常務執行役員
「調剤併設型ドラッグストアの役割と対人業務ソフト・ハードの取組」

 私たちツルハグループは「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」という理念のもと、地域医療の担い手として、より身近で安心できるサービスをお届けするべく、お客様の視点に立った店づくりを展開しています。
 便利で信頼されるドラッグストアを目指す私たちは、健康寿命の延伸をめざして保健用医薬品やサプリメントの販売に力を入れ、全社で啓発活動を展開しております。また健康に対する取組として、全国で450回の「健康セミナー」を実施しているほか、健康増進を目的とした「健康フェスタ」を各事業会社で開催し、薬剤師、管理栄養士、登録販売者が、自己健康管理の説明や食事等の相談を実施。すでに全国で約11万人の入場者があり、こうした取組が生活者の健康作りに役立っていると考えております。
 一方、店舗では2018年8月16日から「お客様健康管理台帳」を全店共通で導入し、OTC保健薬の管理を実施しています。この台帳によって、お客様の健康情報、服薬されている薬剤、症状の変化や購入履歴の記録をカウンセリングに活用でき、お客様が購入された保健薬類、健康食品を健康管理に役立てることが可能になりました。そして、将来的に調剤料が下がるだろうとの予測のもと、2010年より調剤機器(ロボット)の導入やシステムの効率化による働き方改革を進めており、これからは薬剤師の“対人業務のスペシャリスト化”を目指したいと考えております。

講演4
やまうら  かつのり
山浦 克典 氏
慶応義塾大学薬学部 教授 附属薬局長
「大学附属薬局としての学生教育及び地域住民の疾病予防の取組」

 慶應義塾大学附属薬局は、全国で初めて大学構内に開局した薬局であり、薬学生の教育施設として、また、地域住民のかかりつけ薬局として機能している。
 薬剤師業務は対物から対人へのシフトが求められており、本学では3-4年次の臨床準備教育において、服薬指導に必要なコミュニケーション能力の醸成を段階的に行っている。具体的には、学生同士のロールプレイ実習の後、最終段階として実際の臨床現場を想定し、附属薬局で模擬患者(SP)に対して服薬指導を実践する。本実習は、一般の外来患者に交じって実施するため、学生は相当な緊張感のもと、コミュニケーションスキルを磨くことができる。
 一方、地域住民の疾病予防の取組として薬局内に検体測定室を設置し、血中脂質、HbA1cの測定に加え、唾液検査による口腔内環境測定と、子宮頸がん対のHPV自己検査キットを販売している。また、近隣の芝大神宮の協力のもと、毎年、祈祷殿を会場に健康イベントを開催し、検体測定を無料で実施し、生活習慣病予防の啓発活動を続けている。さらに、本学体育研究所と協働し、地域住民の健康維持増進を目指した健康づくり教室を開催している。
 これらの教育と地域貢献の取組を研究の形にまとめて情報発信するなど、今後も大学附属薬局としての役割を果たしていく。

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