研究成果報告書

令和5年度 研究成果報告書

令和5年度 啓発事業報告書

筑波大学 人間系 助教 仲田真理子
「発達障害の当事者とまわりの人のための薬はじめてガイド」子ども
一般社団法人 日本くすり教育研究所 理事 福田早苗
小中学校における『おくすり教育』推進のための『薬の正しい使い方』に関する標語募集及び啓発事業
一般社団法人摂津市薬剤師会 事務局長 伊藤博樹
認知症の発症予防の啓発および、早期発見・早期治療の啓発

令和5年度 調査・研究報告書

慶應義塾大学 薬学部薬学科 薬剤学講座 教授 登美斉俊
アミノ酸製剤・サプリメントが神経障害性疼痛治療薬の中枢移行・作用発現に及ぼす影響
慶應義塾大学 薬学部 専任講師 今井俊吾
マスメディアの「医薬品」に関する報道が消費者(患者)におよぼす影響の評価
日本大学 薬学部薬剤学研究室 専任講師 鈴木直人
製剤化による鼻腔滞留性の増加がアレルギー性鼻炎用点鼻薬の中枢性副作用に及ぼす影響
豊橋技術科学大学大学院 工学研究科 電気・電子情報工学系 教授 内田裕久
医薬品使用モニターシステムの試作
一般社団法人 上田薬剤師会 薬局部 理事 飯島裕也
感染症対策における一般用医薬品の適正使用に関する研究
静岡県立大学 薬学部 臨床薬剤学分野 講師 内野智信
ドライスキンのセルフメディケーションのための保湿能を付与したナノ粒子外用剤の開発
東京理科大学 薬学部薬学科医療デザイン・臨床製剤設計学 嘱託助教 廣瀬香織
医療現場のニーズに応える使用者に優しい口腔粘膜創傷治療用製剤の開発
千葉大学大学院 薬学研究院 助教 植田圭祐
難溶性OTC 医薬品の製剤特性改善を目的とした薬物非晶質ナノ粒子形成型固形製剤開発
岐阜薬科大学 薬学部生命薬学大講座生化学研究室 副学長 兼 教授 五十里彰
細胞間バリア分子を標的とした過敏性腸症候群治療薬の開発
昭和大学 統括薬剤部 薬学部 准教授 百賢二
緊急避妊薬の適正使用および避妊に関する正しい知識の普及を目指した一般市民向けの教材の開発と教育の実践に関する研究
湘南医療大学 薬学部 医療薬学科 臨床薬剤学研究室 准教授 寺島朝子
緊急避妊薬のOTC化を見据えた使用者向け提供情報・資料に対するニーズ調査
昭和大学 薬学部 社会健康薬学講座 社会薬学部門 講師 赤川圭子
OTC 医薬品使用者のヘルスリテラシー力向上を目的としたアプローチ方法の開発
順天堂大学 医学部眼科学講座 准教授 猪俣武範
スマホアプリ型ドライアイ診断補助用プログラム医療機器の診断能に関わる多機関観察研究
慶應義塾大学 薬学部薬効解析学講座 准教授 田口和明
医療用一般用共用医薬品 (仮称) 類型に対する薬剤師の認知・意識・関心実態把握調査
就実大学 薬学部 講師 出石恭久
薬局における血管病変に着目した脳心血管疾患の個別化セルフメディケーションの構築

令和5年度 助成を受けられた方の声

【調査・研究 助成者】

慶應義塾大学薬学部 薬剤学講座
教授 登美 斉俊 氏

◆この度受けられた助成について所感および当助成によって成し得た成果など

 本助成を通じて、一般用医薬品やサプリメントとの併用が神経障害性疼痛治療薬の作用に及ぼす影響が、メカニズムの違いにより薬剤ごとに異なることを明らかにしました。医薬品を使いこなすには、併用を止めてリスクを回避するだけではなく、併用可能な薬剤選択や服用方法の提案を行うことも重要です。ただ、このような提案には、細分化した評価に基づくエビデンスの裏付けが必要です。今回、助成をいただいたことで、複数の薬剤を用いた比較研究が可能となり、結果的に薬剤ごとのメカニズムの違いを明らかにできました。本助成なくして得られなかった成果であり、深く感謝しています。

◆当財団の助成の意義について

 プロフェッショナルメディケーションと比較して、セルフメディケーションは自らの継続意欲の維持が特に大切です。そして、意欲を維持するには、一般用医薬品を服用した際に効能を実感することが支えになります。そのため、一般用医薬品を提供する際には、不適切な服用などによって薬効発揮が妨げられないよう、エビデンスの構築やわかりやすい情報提供に万全を尽くさなくてはなりません。専門である薬剤学の観点では、一般用医薬品を安定的に吸収させ、効果を発揮させるためのエビデンス構築を助成を通じて支援いただくことが、セルフメディケーションの推進に資すると考えています。

◆当助成への応募を検討している方へ

 薬効や疾患といった学術的分類に基づく専門性とは異なり、一般用医薬品という政策的な分類に基づいて研究を立案するのは、特に基礎研究の立場に近づくほど着手しにくいと感じる面があります。一方で、幅広い疾患領域に一般用医薬品が用いられていることを踏まえると、幅広い研究者に門戸が開かれている助成であるともいえます。様々な専門性を持つ研究者が、本助成をきっかけに一般用医薬品に着目して調査・研究を展開することで、学際的なセルフメディケーション研究が活性化することを期待したいです。

【啓発事業等 助成者】

筑波大学 人間系 心理学域
助教 仲田 真理子 氏

◆この度受けられた助成について所感および当助成によって成し得た成果など

 私たちは、「発達障害の当事者とまわりの人のための薬はじめてガイド」という神経発達症に関する通院・服薬全般についての理解促進パンフレットを製作・発行しています。当事者・支援者の中の経済的格差やデジタルディバイドの問題に対処するため、WebサイトからダウンロードできるPDF版だけではなく紙の冊子も発行し、全国に無料で発送しています。本プロジェクトは、令和3年度、令和5年度に啓発事業助成に採択していただき、そのおかげでパンフレットの初版を製作・発行することができました。今では第3版まで版を重ね、5万部を超える“ベストセラー”となって、当初のユーザーとして想定していた個人と病院・薬局だけではなく、学校、市区町村、福祉事業所、企業、自助グループなどからもたくさんの発送依頼をいただくようになりました。私たちは研究者を中心とした有志で、啓発事業はこれが初めて、企業や自治体からの経済的・人的バックアップも、コネクションもない状態でした。経歴よりもプロジェクトの内容と実現可能性、そして社会の中での必要性を当財団に評価していただけたことは、プロジェクトを進めていくうえでの大きな自信になりました。

◆当財団の助成の意義について

 神経発達症のある人は体調を崩しやすい場合が多く、一般用医薬品には頻繁にお世話になることが多いです。実のところ、私たちのパンフレットは一般用医薬品に限定した内容ではありません。しかし、どのような薬であっても上手に安全に活用するためには情報が必要であるという理念を共有し、ユーザーの利便性を考えた「ワンストップ」のパンフレットを作ることを支援していただいていることには、神経発達症の一当事者としても非常に感謝しております。

◆当助成への応募を検討している方へ

 研究をしていると、新しいプロジェクトを始めたいけれども助成していただくための実績がなく、チャレンジのスタートラインに立てない、ということを頻繁に経験します。しかし、薬学部でも医学部でもない所属の私がここに寄稿させてただいていることからもお分かりいただけるように、ゼロからのスタートを応援していただける、フェアで暖かい助成制度です。また、立ち上げは支援してもらえても継続の資金がなく活動を終了せざるを得ないこともよくありますが、活動の継続も応援していただけることはとても心強いです。まずはホームページから、これまで助成を受けたグループの報告書をチェックしてみてください。

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