シンポジウム

講演1

こうの のりあつ
河野 典厚 氏
独立行政法人医薬品医療機器総合機構  一般薬等審査部 部長

 一般用医薬品については医療用医薬品とは異なる製品開発の困難さがありますが、今後のOTC推進のためには、その販売に際して薬剤師の一般的職能や個人の経験だけに頼るのではなく、どのような患者さんにはどのようなOTCをあるいは受診をお勧めすべきか、患者・疾病を中心とした薬局における対応方法を明確にすることが重要ではないでしょうか。
承認審査の立場からすると、このような「トリアージ」が普及することにより、薬剤師がスイッチOTCを幅広く取り扱うことへの患者・国民の理解・安心感に通じるのではないかと期待します。
〈今後の助成事業に期待するテーマ〉
欧米各国におけるOTC販売に際しての薬剤師の役割及びどのような関連教育を受けているか等の調査・研究

講演2

ふじわら ひでのり
藤原 英憲 氏
社団法人 日本薬剤師会 常務理事

 「トリアージ」の前に相談応需、聞き取り・観察を十分に行い、症状から観た可能性のある原因等をわかりやすく表現することが大切です。実務にあたっては、6年制薬剤師教育の成果が期待されます。これからの薬剤師は医療のゲートキーパー(仕分け人)あるいはセルフメディケーションの担い手、特に健康相談を通して、より信頼される職能になると思われます。
そのためには、薬剤師が自らの顧客を育てる努力が必要となります。今後、薬剤師にとって、医師、国民を含めたセルフメディケーションにおける地域医療の連携が大切になってきます。

講演3

にしざわ もとひと
西沢 元仁 氏
日本OTC医薬品協会 常務理事

 どの様に優れた医薬品も、その供給と活用無しには意味がありません。イギリスでは、生活者のクスリや疾病に対する理解を踏まえ、各関係団体の協力でスイッチOTCの範囲を広げてきました。トリアージにおいて、薬剤師がお客様の知識レベルを見極めることが重要なことです。新販売制度において販売時に専門家の存在が不可欠であることに繋がります。
メーカーは今後とも様々な医薬品を供給して参ります。「薬剤師と生活者がどのように係わりあってより良い健康をつくっていく」モデルを、海外にも発信できることを願っています。
〈今後の助成事業に期待するテーマ〉
薬剤師・登録販売者(専門家)への情報提供に関する調査・研究

講演4

こんどう やすひこ
近藤 泰彦 氏
株式会社 星光堂薬局 顧問

 今回の新販売制度の施行によって法律的な地盤が整った今、我々にとって大切なのは、セルフメディケーションの考え方に立った、適切な情報提供を行っていく事と考えます。それは情報を提供する前に、お客様の思っている事や悩んでいる状況を良くお聞きし、それを基に自分の知識の引き出しの中からお客様に合った情報を選択し、提供する事が肝要です。
それには相手の立場に立ち相手の状況を十分に把握する、コミュニケーション能力(お聞きする力)が必要とされます。新販売制度によって新しく生まれた登録販売者は、お薬の販売者の一員としてさらに自己研鑽し、そのコミュニケーション能力を醸成しなければなりません、一人ひとりの登録販売者が薬剤師にも勝るとも劣らないような教育研鑽を期待します。
〈今後の助成事業に期待するテーマ〉
専門家、特に登録販売者への教育に関する調査・研究

講演5

そうりん さおり
宗林 さおり 氏
独立行政法人 国民生活センター 商品テスト部  調査役

 消費者が薬局・薬店で求めるのは(1)常備薬の補給や経験済みの症状への薬、(2)新しい症状に対応する新しい薬の2つです。おくすりの専門家に望みたいのは(1)では第1類薬品を含む新しいおくすりの紹介です。(2)では広範囲で積極的なトリアージの提供です。また、医薬品と健康食品のトリアージや切れ味の良いOTC薬の提供も期待します。
薬剤師の応対では、かしこまったものではなく、普通にコミュニケーションができる環境づくりが必要です。また生活者、専門家、医師が関わりを強め、地域連携の仕組みづくりを検討する必要もあるでしょう。
〈今後の助成事業に期待するテーマ〉
消費者のニーズがどのような治療分野にあるのか、また、それらを消費者がどのように生活の中に取り入れていくのか等のシミュレーション調査・研究

講演6

やまもと ふみ
山本 史 氏
厚生労働省医薬食品局総務課 薬事企画官

 新販売制度の通常業務に応えていただくことで、薬局・薬店の基礎体力がつくのではないかと考えます。その延長線上にトリアージがあります。新販売制度で基礎体力をつけた上で、一段上の充実した聞き取りができ、消費者一人ひとりの状況を踏まえた情報発信ができる「町で頼りになる薬屋さん」をめざして頂きたい。
問題は、今現在、薬局・薬店において、それぞれの店舗に理想のトリアージを行う基礎体力があるかどうかであり、もし体力不足であれば、そのボトルネックが何であるかを見直してみることが必要だと思います。
〈今後の助成事業に期待するテーマ〉
薬局・薬店におけるトリアージ実施の基礎体力に関する調査・研究

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