シンポジウム

パネルディスカッション

「薬剤師は生活者のセルフケアにどう向き合うか」

テーマ説明

 超高齢化問題をかかえる日本では、今、健康で自立した生活ができる期間「健康寿命」を一日でも永く延ばし、明るい生活が続けられるように様々な取り組みが進められています。ここで大切なことは、生活者がセルフケア意識を高め、積極的に検診を行ない、相談を実践することです。
 また、セルフケアの実践には、自分の健康を維持するための予防法を身に付けたり、かぜなど身近な病気をOTC薬で治すことも含まれます。ところが、これだけ多様な健康情報があふれる中で、自分に合った予防法や対処法を的確に把握することは簡単ではありません。
 そこで活用していただきたいのが、最も身近な健康の専門家、町の薬局・ドラッグストアの薬剤師です。一方、薬剤師は、生活者のセルフケアパートナーとして、この問題に真剣に向き合い、調剤やくすりの説明だけではなく、生活指導、介護、子育て、専門医への受診勧奨など、生活に直結する様々なアドバイスを提供できる存在にならなければなりません。
 本パネルディスカッションを通じて、セルフケア支援を行うために薬剤師がどう向き合うかについて考えたいと思います。

総括

 日本の現状を見るに、生活者がセルフケアに積極的に取り込むことが必要であることは、医師、薬剤師、行政、それぞれの立場においても同じ意見でありました。
 生活者のセルフケア(セルフメディケーションを含む)を推進させるには、この問題を地域医療の一環として捉え、医師、薬剤師そして、多種にわたる医療・福祉従事者と連携を図ることが必要です。地域の医師会、薬剤師会、その他の関係団体が、メタボやロコモ等に関する共通のテーマを設定し、協同で行動することも必要です。さらに、生活者のセルフケアに対する認識を高めるためには、行政の後押しが必要です。広く生活者に呼びかけるさまざまな試みや施策が期待されます。
 一方、町のクリニックや診療所と薬局・ドラッグストアがウィン・ウィンの関係を構築できるような施策も考えるべきではないでしょうか。その視点から薬剤師は調剤や薬の説明に留まらず、生活者の実生活に直接接触できる環境づくりや行動(在宅医療に係る等)を積極的に行うことも求められます。すなわち、生活者の運動、食事、子育て、介護、生活指導にまで踏み込むことが必要です。
 また、地域コミュニティへの積極的な参加や、家族参加の勉強会、相談会等を企画することも必要になることでしょう。薬局、ドラッグストアは、「町の健康ステーション」としての役割を持ち、薬剤師は、“待ちの姿勢”から、“出かけていく(働きかける)姿勢”に変わらなければなりません。シンポジウムにご参加いただきました皆様が、このディスカッションから得たヒントを、日頃の活動に生かしていただきたいと願っております。


  • 慶應義塾大学薬学部 教授 黒川 達夫 氏

  • パネルディスカッションの様子
戻る

バックナンバー