講演1
薬剤師によるOTC薬の供給と適切な セルフメディケーションの推進
なかい きよひと中井 清人 氏
厚生労働省医薬食品局総務課 医薬情報室長
WHOは、セルフメディケーションを「セルフケアの一つであり、個々人が自身の病状、症状を治療するために医薬品を選んで使用すること」と定義し、効能・効果、禁忌等の医薬品情報に加えて、いつ、どういった場合に専門家にアクセスするべきかという情報も必要であるとしています。
そしてまた、セルフメディケーションを推進するための薬剤師の役割については、適正使用のための情報提供、症状や病状の確認と適切な医療への誘導、質の高い医薬品を提供する者として医薬品の品質を保証することとし、さらには指導者としての自己研鑽や、地域における疾病予防・健康問題の普及啓発を進める役割までと、WHOが期待する使命は広域におよんでいます。
一方、我が国においても、本年6月に策定された日本再興戦略で「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談、情報提供を行う等、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進すること」とし、薬局・薬剤師にはセルフメディケーションの担い手として大きな期待をかけています。その観点から考えるに、WHOの定義は薬局・薬剤師の基本・原点であり、私たちは今こそ“まちの化学者”と言われる薬局の原点に立ち返ることが求められているように感じます。
講演2
地域におけるセルフケア支援 ー薬剤師の新たな役割ー
ささき たかお佐々木 孝雄 氏
一般社団法人 宮城県薬剤師会 会長
近年、医薬品供給チャネルの多様化に伴い、個々の生活者に適用される薬物療法の全体像を把握することが困難になっています。そのような中、細分化された情報を再統合して生活者の抱える問題を的確に把握すること、そして、その問題を正しく評価することが、セルフケア支援のみならず、適切な薬物療法実現のためには不可欠です。
宮城県薬剤師会では前述の課題を解決するために、以下のような取り組みを行っています。需要者の問題解決に必要な情報を漏れなく収集するため、一般用医薬品の相談応需・供給体制の整備を促進し、調剤偏重からの脱却を図ること。そこで薬局で取り扱うべき推奨医薬品リスト(約150品目)を作成し、その供給ルートを検討。さらに南三陸町に設置した会営薬局を1つのモデルとして次世代薬局の姿を模索しています。需要者の訴える症状の重症度・緊急度を見極めて、一般用医薬品の適応か否かを判断する能力(薬剤師によるトリアージ)の育成をめざし、症候学を基盤としたトリアージに関する研修会を継続的に実施中です。
当会では、セルフケアの支援とは未病の生活者のみならず、すべての地域生活者を対象として、その健康・医療に関する様々な問題の解決を援助することであると認識しています。またその実現に向けて、日々、あらためて薬剤師の果たすべき役割の重さを実感しています。