講演1
薬局・薬剤師に期待すること
たみや けんいち田宮 憲一 氏
厚生労働省 医薬食品局総務課 医薬情報室長 薬剤師を取り巻く環境は、超高齢化社会の到来、医薬分業の進展、一般用医薬品のインターネット販売の解禁など、近年、大きく変化しています。また、6年制薬学教育の導入によって薬剤師に対する国民の期待が高まる一方、医薬分業に対する批判など薬剤師が職能を発揮しているか否かに厳しい目が向けられています。
このような社会情勢を踏まえ、あらためて、かかりつけ薬局を推進するための指針として「薬局の求められる機能とあるべき姿」が本年1月に日本医療薬学会にて公表されました。その中で、薬局・薬剤師に求められる機能として「地域に密着した健康情報拠点としての役割」が掲げられ、薬局が取り組むべき事項等が示されています。また、昨年6月の日本再興戦略にも「薬局を地域に密着した健康情報の拠点とし、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」旨が盛り込まれました。
今後進められる地域包括ケアの中で、薬局・薬剤師はどのような役割を果たすべきなのか。在宅医療、セルフメディケーションの推進、医療・介護、健康相談の応需など、薬局・薬剤師の機能をあらためて考え、実践していくことが求められていると思います。
講演2
セルフメディケーションのための おくすり教育
かとう てつた加藤 哲太 氏
東京薬科大学 薬学部 教授 セルフメディケーションが注目される社会を背景に、中学校学習指導要領に「医薬品は、正しく使用すること」が加えられ、義務教育の場でも医薬品教育がスタートしました。
「おくすり教育」で得られるもの、それはセルフメディケーションへの強固な基盤づくりです。医薬品の誤用をなくし、必要な医薬品の正しい利用方法を理解させるため、「なぜ」の授業を実施しなければなりません。そして薬剤師が参画する「おくすり授業」が実施されたならば、児童・生徒は、薬剤師が健康やくすりの専門家であると理解させることができますし、今後はこうした理解がセルフメディケーションの基盤づくりとして大きな意味を持つと考えます。
「おくすり教育」には教員・薬剤師によるチームティーチング(T.T.)を推奨します。その理由として、単なる知識の修得ではなく、自分で判断し行動できる能力を養うことが重要であり、専門知識を持った薬剤師による指導が効果的である。薬剤師が参画することにより、薬剤師が医薬品の専門家であることを学ぶことができる、などが挙げられます。
講演3
薬局の健康ステーションに向けて -薬局において薬剤師の果たすべき大切な役割-
おおじま たかひろ大島 崇弘 氏
株式会社大島薬局 取締役 統括本部長 薬局の『街の健康ステーション』としての機能強化が期待される今、その機能を十分に果たすためには、地域住民との信頼関係強化が必須です。同時に、元気な時から医療・介護が必要な時まで、地域住民の全てのライフステージをサポートできることが、薬局の大きな“強み”であると感じております。
改正薬事法施行から1年後の2010年、藤沢市薬剤師会が実施した市民アンケート調査によると、薬局およびOTC医薬品の選択基準として「薬剤師の知識・応対・説明」を重要視する一方、薬局と店舗販売業の違いを認識している市民は半数未満であり、薬の分類や販売員の資格を店頭で確認している市民はわずか10%未満であるとの結果が出ています。市民は薬局・薬剤師に期待しながら、法制度や薬局機能への理解不足もあり、その期待が薬局や医薬品選択に結びついていないのが実状です。今いちど薬局機能を見直し、薬局の“強み”を最大限に活かし、地域住民から「健康を管理してもらいたい」と頼られるステーションを創造していく時期であると考えております。