シンポジウム

講演1

健康サポート薬局の役割

たみや けんいち
田宮 憲一 氏
厚生労働省 医薬・生活衛生局 総務課 医薬情報室長

 2025年を目途に構築を目指す地域包括ケアシステムの中で、薬局・薬剤師がどのような役割を果たしていくかが重要な課題となっています。こうした中、平成25年の日本再興戦略に「薬局を地域に密着した健康情報の拠点とし、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」旨が盛り込まれ、平成26年度から、そのためのモデル事業が全都道府県で実施されています。また、今年度は検討会において、地域包括ケアシステムの中で、多職種と連携して地域住民の主体的な健康の維持・増進を積極的に支援する薬局「健康サポート薬局」の要件等について議論し、9月に報告書を取りまとめました。
 「健康サポート薬局」には、まず、かかりつけ薬剤師・薬局としての3つの基本的機能(服薬情報等の一元化、24時間対応・在宅対応、医療機関・地域包括支援センター等との連携)を備えていることが求められます。その上で、医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言、地域住民の身近な存在として健康の維持・増進に関する相談を幅広く受け付け、適切な専門職種や関係機関への紹介、地域住民に対する率先した健康サポートとともに地域の薬局への情報発信や取組支援、などを行うことが期待されます。
 今後、「患者のための薬局ビジョン」を策定するとともに、「健康サポート薬局」としての人員配置・運営体制や医薬品等の取扱い・設備などの要件を満たす薬局を各都道府県のウェブサイトで公表すること等を通じて、薬局の積極的な取組を後押ししたいと考えています。

講演2

セルフメディケーションの現状と課題

やまざき だいさく
山崎 大作 氏
日本経済新聞社 編集局 企業報道部 記者

 2014年度の日本の医療費は12年連続増加し、約40兆円となりました。高齢化に伴って医療費はさらに伸び、2025年には50兆円を超えると予測されています。現在10兆円を占める医薬品は高額化が続いています。抗がん剤などで主流になりつつあるバイオ医薬品の抗体医薬品はもちろん、今後の実用化が期待される再生医療製品もさらに高額です。大きな経済成長が期待できない今後の日本において、こうした伸びを抑えることは喫緊の課題となっています。
 一方、国民の意識はまだまだ低く、一般用医薬品として販売されている医薬品が3割負担と額が小さいことから、自己負担分だけを考えて医療機関を受診する人も少なくありません。加えて、現場の医師からは「風邪で来院した患者から抗菌薬を求められた場合、効果がないことは分かっても出さざるを得ない」という声も聞こえてきます。逆に、海外では医療費を抑えるために、効果があっても費用対効果が悪いため使用が控えられる医薬品もあります。日本ではこれまで承認された医薬品については、原則として保険診療で使えてきました。今後も同じように医薬品を保険診療で提供し続けるためには、何らかの工夫が必要な時期がきていると思います。高齢化が進み、医薬品のさらなる高額化が止められない中、最新の医療と医薬品に全国民がアクセスできる制度を維持し続けるためには、国民一人ひとりが一般用医薬品を活用するなど、公的医療費の効率的な活用を考えていく必要があると考えます。

講演3

セルフメディケーションに向けた ドラッグストアの役割

せきぐち のぶゆき
関口 信行 氏
株式会社龍生堂薬局 代表取締役

 東京・新宿を中心に薬局14店舗、多摩地区に郊外型ドラッグストアが31店舗、薬剤師の在籍数は約150名。その内、調剤併設店舗が25店舗あり16店舗で在宅を行っており、訪問患者数は約300名。施設訪問ではなく、すべて居宅訪問で行っています。
 当社が加盟しているJACDSの設立趣意書には「少子高齢化社会の中でセルフメディケーションの受け皿となり、国民の健康と豊かな暮らしに寄与する」とその目的が書かれています。そして医療施設としてのドラッグストアの取り組みの結果、平成20年4月にはドラッグストアが経済産業省の標準産業分類に掲載され、地位が確定されたことが、大きな変革につながってきています。
 その中で、現在のドラッグストア・薬局にはセルフメディケーションの推進に向けた取り組みとして、調剤、処方箋薬と並び、ドクターと連携する「在宅医療」の役割も求められています。
 高齢化社会の進展により、これからは欧米のようにチーム医療やセルフメディケーションといった形で薬剤師の職務がさらに広がっていくと思われます。在宅医療に取り組む医師や看護師との連携は必須であり、薬剤師が医師をはじめ、他の医療従事者と連携していく入口が在宅医療だと思います。またTPPが妥結したことで、今後は色々なドラッグストアが世界から日本市場に進出してくるでしょう。そうした時代にあって、私どもはより地域に密着した医療・医薬サービスの提供に取り組んでまいりたいと思いますので、今後のご協力をよろしくお願いいたします。

講演4

地域のセルフケアパートナーとしての 薬剤師の新たな役割

ふじわら ひでのり
藤原 英憲 氏
有限会社つちばし薬局 代表取締役

 医薬分業率70%が目前という中で、薬局本来の在り方、薬剤師の役割が問われています。同時に、超高齢化に伴い、地域における薬局の役割は社会保障制度改革への貢献とともに、健康づくり(地域保健)への貢献にも大きな期待が寄せられています。
 規制改革に関する第3次答申においては、地域包括ケアの中でチーム医療の一員として専門性を活かすために「かかりつけ薬局」を進めることが明言されました。また25年6月に発表された日本再興戦略の一つには、地域に密着した健康情報の拠点として、薬局をセルフメディケーション推進のために活用促進することが入りました。
 そして厚労省の検討会で認定される「健康サポート薬局」においては、地域住民が求めるものを薬局・薬剤師がいかに感じるかが鍵になっていくと思われます。今、私たち地域薬局に求められているセルフメディケーション支援には、どのような問題や課題があり、またどのような考え方をするべきなのでしょうか。
 私は、薬局の役割の根底にはチーム医療(連携)の考え方が必要だと思います。さまざまな医療職種の人々が、一人の患者・生活者に対して専門性を発揮しながら、どれだけ手厚いサービスを提供できるかです。特に私どものような小さな規模の薬局は、地域に根ざしたきめ細かい対応をしていかなければなりません。最も大切なのは「私のためにこんなに努力をしてくれた」という記憶に残る店づくり、人づくりであろうと思います。今後、現場の薬剤師等専門家が積極的に生活者に声掛けを行いセルフメディケーションの必要性やその支援方法を適切に伝えることが、今後のセルフメディケーション推進に結びつくと考えております。

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