シンポジウム

基調講演

 認知症の予防と一概に言っても認知症の原因によって予防する手段は異なります。認知症の3大原因の1つである血管性認知症を予防するためには脳血管障害を予防することが血管性認知症の予防につながります。ここでは認知症の代表的な原因疾患であるアルツハイマー型認知症を取り上げて予防を考えてみます。予防は一次、二次、三次予防に分けることができます。一次予防は健康に生活している人たちがアルツハイマー型認知症にならないようにすること、二次予防は特定のリスクがある人たちがアルツハイマー型認知症にならないようにすること、あるいはアルツハイマー型認知症になる時期をできるだけ遅らせること、そして三次予防はアルツハイマー型認知症になってしまった人たちの病気の進行を遅らせる ことになります。

  アルツハイマー型認知症の三次予防も病気になってしまった人たちにとってはとても大切な課題ですが、ここでは一次予防と二次予防を取り上げます。一次予防であっても、二次予防であっても特定の手段でアルツハイマー型認知症にならないようにすることはできません。アルツハイマー型認知症になる時期を遅らせるようにすることが現実的な目標になります。一次予防を考えると、加齢がアルツハイマー型認知症の最大の危険因子ですが、歳をとらないようにすることはできません。いままでの研究では加齢以外にも様々な危険因子が報告されていますが、すべての危険因子を日常生活から取り除くことはできません。また、特定の危険因子を取り除いた結果としてアルツハイマー型認知症になる時期を遅らせることができたという報告もありません。危険因子の1つの軽度認知障害といって認知症の前駆状態と考えることができる状態がありますが、軽度認知障害の人を対象にした予防を二次予防ということができます。今から数年前の推計ですが認知症の人は65歳以上で15%、軽度認知障害は13%といわれています。毎年1割以上の軽度認知障害の人たちが認知症になることを考えれば、軽度認知障害の人を対象にした二次予防の意義は大きいでしょう。

 当日は具体的な事例を示しながら、一次予防と二次予防を地域で進めていくうえでの課題と薬剤師の方々が地域の認知症予防活動における役割を考えてみます。

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