シンポジウム

講演1

「健康サポート薬局が目指していること」

きひら てつなり
紀平 哲也 氏
厚生労働省 医薬・生活衛生局 総務課 薬事企画官

 地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の役割として、「患者のための薬局ビジョン」において、薬剤師には、日頃から患者と継続的に関わることでいつでも気軽に相談できる“かかりつけ”として患者に寄り添うこと、薬局には、そのかかりつけ薬剤師が薬学的管理を実践するための環境を整備することが求められています。そのため、薬剤師の実務的な業務としては、患者の服薬状況の把握や薬物治療の経過等をモニタリングする対人業務へとより重点を置くようになることが期待されています。
 そのかかりつけ薬剤師・薬局としての機能を備えた上で地域住民の健康づくりも積極的に支援する「健康サポート薬局」には、多職種と連携して地域住民の健康の維持・増進を支援し、地域包括ケアシステムの中で、相談役の一つとしての役割を果たすことが求められています。かかりつけ薬剤師だからこそできる住民個々人に応じたサービスを提供していくことが健康サポート薬局に期待されていることです。
 また、健康サポート薬局には、単独で機能を果たすだけではなく、地域の薬局への情報発信や取組の支援等を行うなど、地域の薬局を牽引し、かつ支え合う存在となっていただく期待が込められています。薬剤師・薬局による地域の中での具体的な取組とその成果を地域住民に示していくことが重要となりますが、健康サポート薬局がそれを先導して実践していくことを期待しています。

講演2

「地域包括ケアシステムで薬局がもとめられていること、薬剤師にしかできないこと」

こうの のりこ
河野 紀子 氏
日経ドラッグインフォメーション 編集記者

 かかりつけ薬剤師、かかりつけ薬局、セルフメディケーション、健康サポート薬局──。地域包括ケアシステムの中で、薬局や薬剤師がどのような役割を担っていけばよいのか、そのイメージするところは、ここ数年でより明確になってきた。
 しかしながら、「対物業務」に代表されるこれまでのビジネスモデルから脱却して、「対人業務」にシフトしていくのは、簡単ではない。例えば、セルフメディケーションの推進で重要になるOTC薬の販売。弊誌のウェブサイト「DI Online」の薬剤師読者を対象にした調査では、23%が勤務先でOTC薬を販売しておらず、その理由として「近くにドラッグストアがある」「OTC薬のニーズがない」「手間がかかる(人手が足りない)」と、“あきらめてしまっている”様子がうかがえた。
 一方で、地域のニーズをくみ取った品ぞろえをして、上手に販売している薬局を取材すると、「物だけを売るのではなく、薬剤師としての知識も一緒に売る」という姿勢が共通している。
 OTC薬の販売にとどまらず、地域包括ケアの中で薬剤師ならではの対人業務を進めていくには、個人、薬局、会社での改革は必要だろう。そこには、「働き方改革」の視点が欠かせない。まず業務の中のムダを洗い出して効率化する、生産性を高める。そして、患者、消費者、他職種から求められている役割を把握して、意識も変える。薬剤師ならではの視点で職能を発揮できることに注力していけるような環境を、築いていくことが求められる。

講演3

「地域に連携したドラッグストアの役割と現場対応力」 ~病気の予防から健康維持のセルフケア支援~

すぎうら あきこ
杉浦 昭子 氏
スギホールディングス株式会社 代表取締役副社長

 創業40周年を過ぎましたが、創業当時の薬局は、「かかりつけ薬局」として、地域の方々の「健康・美容・生活等」あらゆる個人個人の相談を受ける場所でした。老若男女の悩みやご相談事を気軽に相談に来ていただけるところでした。時には数時間もお話を聞いて、薬を売るのではなく、養生を説明するだけ、ということもしばしばでした。
 やがて、地域の方々の信頼を得るところとなり、商売が繁盛していきました。そんな中、ドラッグストアの時代となり、「近くて・安くて・便利」としてお客様の支持を得て広がりました。しかし私たちは価格や便利さ、品ぞろえの良さだけではなく、「薬局として薬剤師や管理栄養士・登録販売者などの専門性を活かし、地域の人々の役に立つ」という考えを貫き通して、「何でも相談できる薬局」になることを目標としてきました。  時代は、高齢化を迎え、既に超高齢化時代に突入し、2人に1人は100歳を超えるとも言われております。長生きをすることが大変嬉しいことですが、「認知症や寝たきりにはなりたくない」ということが国民の願いとなり、予防への取り組みが重要となっています。産官学(大学・自治体・民間企業)の連携もずいぶんと進み、地域の方々がいつまでも健康で生活できるよう力を合わせて取り組みたいと考えております。中学校区に1つ、測定機器なども充実させた「核店舗」を作り、セルフメディケーションをサポートする薬局を目指します。

講演4.

「OTC医薬品の適正使用における情報提供のためのコミュニケーション教育及び研修方法に関する調査研究」

たていし まさと
立石 正登 氏
長崎国際大学薬学部 薬学科 教授

 一般に、医薬品販売におけるコミュニケーションの重要性は認識されていますが、その反面、その難しさも同じように感じられていると思います。コミュニケーションにおける社員教育はどのような方法が良いのか、各社工夫をされて実施されていますが、コミュニケーション教育においては、限られた時間内に、効率よく、効果的にコミュニケーション能力を修得する方法を用いる必要があると考えています。一般的な医療コミュニケーション教育では、現実的な医療現場のある場面のシナリオをリアルに演じる相手役(医療コミュニケーションでは模擬患者/SP)、一般用医薬品の場面では模擬顧客/SC))が、フィードバック等により学習者に多くの「気づき」を与える方法(模擬患者参加型のワークショップ)が用いられます。学習者はこの「気づき」により、「感性」を磨くことができ、コミュニケーション能力の向上につながることになります。このようにコミュニケーション能力向上には、現実的な医療現場のある場面のシナリオを演じる模擬患者・模擬顧客が参加したコミュニケーション研修(ワークショップ)が重要であり、その研修の中での振り返りが重要となります。そこで私共はコミュニケーション研修における重要な役割を演じてくれているSP・SCをまず養成することが重要であると考え、実際の臨床の現場で得られたデータを基にシナリオ作成し、それを使ってSP・SC養成講座を開催していますのでその状況を今回ご紹介します。

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