基調講演

 高尿酸血症はこれまでに2種類の生物に痛風関節炎を起こしてきた。最初の犠牲者となったのは恐竜のティラノザウルスであり、実際にその前足から痛風結節によって削られた骨が見つかっている。2種類目の犠牲者は人類である。人類史上初めて痛風に関して記載したのは、古代ギリシャの医聖ヒポクラテスだ。そして現代の日本はというと、食生活の欧米化によって痛風患者が経年的に増えており、明治時代にはわずか62人だった患者が2019年には125万人まで増加し、痛風の原因である高尿酸血症となると成人男性の20%、女性の5%と、すでに全国で1千万人を超えている。

 この高尿酸血症は血清尿酸値が7mg/dlを超えた場合にそれと診断され、さらに尿酸塩結晶を生じることで痛風関節炎を生じる。改訂ガイドラインでは、痛風発作に対しての第一選択としてNSAIDs、グルココルチコイド、コルヒチンのいずれかの使用が、また予防には長期コルヒチンカバーが推奨されている。

 高尿酸血症の病態は複数ある。血中の尿酸はプリン体から産生されて腎臓から2/3そして消化管から1/3が排泄されることから、その病型は@産生過剰型、A排泄低下型に加え、消化管からの尿酸排泄低下によるB腎外排泄低下と、Cそれらの混合型の4病型に分類される。そこで尿酸降下薬は病型分類に即して使用する。

 高尿酸血症による臓器障害は様々な機構で発生する。我々はヒトiPS細胞から種々の臓器を作っているが、最近の研究により臓器に共通する尿酸トランスポーターを介して尿酸が細胞に取り込まれることで臓器障害が起こる機序に注目している。特に細胞内に尿酸を取り込むURATv1(Glut9)とMCT9を制御することで細胞内への尿酸取り込みを低下させて、臓器障害を軽減できる可能性を見出しており、これらの尿酸トランスポーターに対する新規阻害薬の開発が期待される。

 さて最近、感染研(国立感染症研究所)から、ICUの入室、人工呼吸器の装着、そしてCOVIT-19によって死亡する人について、高尿酸血症による重症化傾向が報告され、日本痛風核酸代謝学会HPへの問合せが増えている。同HP上の「コロナウイルス感染に関する注意喚起」でも紹介しているが、在宅勤務やステイホームによる生活習慣の乱れによって高尿酸血症・痛風が悪化するケースが増えている。なかには緊急事態宣言下で飲酒量が増え、体重が増えることで尿酸値が上昇したケースも少なくない。コロナ禍の自粛生活ではカロリー制限だけでなく、高プリン体食に偏らない食事を心がけ、水分摂取と適度な運動が大事である。特に、尿酸降下薬を服用中の人は受診抑制によって止めないよう、しっかり継続しなければならない。

 もう一つ、抗ウイルス薬であるアビガンは尿酸値を上昇させることで知られ、投薬した人の80%の方に高尿酸血症が起きていることが報告されている。抗ウイルス薬と高尿酸血症・痛風との関わりをはじめ、日本痛風核酸代謝学会のHPの最新情報を参照され、不安解消の一助としていただけると幸いである。

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