シンポジウム

特別講演1

「Withコロナの薬剤師業務に求められる視点」

こうののりこ
河野紀子 氏
日経ドラッグインフォメーション編集記者

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大に伴い、社会全体が新しい生活様式を取り入れた日常が当たり前となりつつある。

 日経ドラッグイフォメーションでは、2020年5月号で緊急特集として「新型コロナウイルス感染症 今、薬局にできること」を企画した。以後、これまで経験したことのない感染症の拡大の中で、薬局、薬剤師が患者や地域住民、社会から求められることは何なのか、という視点で記事を発信している。

 取材を進める中で現場の薬剤師からよく聞くのが、「受診は電話などでも、薬局には直接来る患者が多い」という話である。 こうした患者の心理をくみ取りながら、平時と変わらない対応を行っていくこともコロナ禍においては大事な視点ではないかと考える。

 当たり前のことを淡々とこなしながら、新型コロナに対する最新の情報や消毒薬に関する知識、あるいは眠れない、マスクが買えない、ぜんそくで外へ出られないなど、患者一人ひとりの不安や疑問に細かく対応することも大事ではないか。

 一方、4月に行われた2020年度の調剤報酬改定は、薬局と医療機関をはじめとした「連携」がキーワードの1つではあったが、感染拡大の影響で思ったように進んでいないのも実情と聞く。だが、「コロナだから」と消極的になるのではなく、ウェブ会議システムなどを取り入れて、スマートにこの時代を乗り切っていくことが求められている。

特別講演2

「持続可能社会実現に貢献する当社の次世代調剤併設型ドラッグストア店舗と今後の展望」

おおた たかお
大田 貴雄 氏
株式会社マツモトキヨシ 代表取締役社長

 来るべき次の時代に向けて、我が国ではあらゆる分野において、『持続可能社会』を重要なキーワードとして、様々な取り組みが行われています。

 当社グループも、美と健康の分野を中心に、持続可能社会実現に貢献する取り組みのひとつとして、現在展開している次世代調剤併設型ドラッグストア、『地域包括ケアモデル』と、『次世代ヘルスケアモデルmatsukiyoLAB』を、その一例として紹介します。
『地域包括ケアモデル』とは、健康サポート薬局併設型ドラッグストア店舗をベースとして、そのうえに『対人業務の強化』、『地域医療への参画』、『キュアからケアまで』等々の機能を複数の店舗群で相補的に担い、地域住民のみなさまに、ホスピタリティとニューノーマルでも安全・安心の医療・福祉サービスを永続的に提供する、調剤併設型ドラッグストア店舗です。

 また『次世代ヘルスケアモデルmatsukiyoLAB』とは、上記の『キュアからケアまで』に特化したうえで、健康の分野のみならず美の分野までを網羅的にカバーし、複数の専門家、すなわち薬剤師、登録販売者、管理栄養士、ビューティアドバイザー等々が、チームとなって美と健康の分野のあらゆるサービスを提供する、調剤併設型ドラッグストア店舗です。最近では、薬剤師のスペシャリストが、カウンセリングを通して『きざみ漢方』も紹介する『漢方ケアラボ』も構築し、展開しています。

特別講演3

「新しい日常におけるOTC医薬品の適正使用・育薬」

さとう ひろき
佐藤 宏樹 氏
東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授

 医薬品の適正使用は、医療用医薬品に限らず、OTC医薬品においても重要な課題である。昨今の新型コロナウイルス感染症の感染爆発や災害といった非日常に続いて、フィジカル・ディスタンシングやディザスター・プリベンション等が必要な新しい日常が始まっているが、このような状況下においても、医薬品の適正使用の推進、的確なトリアージとセルフメディケーションが求められる。そのため未知の新しい日常でも対応できる薬剤師、登録販売者などの確実な育成が避けて通れない重要な課題となる。

 我々は、医薬品適正使用・育薬、教育研修のための市販後情報活用システムの構築を行っている。医薬品が使用される全ての場に関与する人々から、医薬品を使用する中での“よくやった”という出来事や、ミスやトラブルの事例(医薬品の市販後情報)を収集し、集まった膨大な市販後情報を機械学習やAIを活用して分析・解析して医薬品適正使用・育薬や教育研修に活用している。

 重要なことは、優れた情報は優れた人によって作られ、優れた人は優れた情報によって作られるということである。収集した市販後情報を教材として加工し、それを教育研修システムとして知識・技能・態度を研鑽し、優れた薬局薬剤師、登録販売者が育成され、より優れた情報が収集され、より優れた教育研修が可能となるといった発展サイクルモデルを紹介する。

 最後に、教育研修という人づくり、情報というモノづくり、このサイクルが回ることで優れた薬局薬剤師・登録販売者が育成され、おのずと医薬品の適正使用・服薬、セルフメディケーションの推進が達成されると考える。

特別講演 まとめ

かみむら なおき
特別講演座長 上村 直樹 氏
東京理科大学薬学部 教授

 メディア、店舗、そして大学の立場から、withコロナの時代のセルフメディケーションをどのように推進していくか―という共通のテーマで話をしていただいた。まず印象に残ったのが、日経ドラッグインフォメーションの河野様の“薬剤師が関わることに気付かせてくれた”という言葉だった。実際、このコロナ禍で何をすべきかが分からないという薬剤師も多いなか、メディアがそこに気付かせてくれたことをありがたく感じた。

 また、マツモトキヨシの大田様からは、かかりつけ薬剤師(=健康サポート薬局)を地域密着で推進されているなかに、新しいドラッグストアの姿を見せていただき大変感銘を受けた。

 そして、東京大学大学院の佐藤先生から発せられた“情報と人づくりを回す”という概念をひじょうに重要なことだと感じ、人物のタイプ別に研修コンテンツを作るという発想も大変面白い。

 3人の先生の話は、「患者のための薬局ビジョン」の中の薬局・薬剤師の専門性とコミュニケーション能力の向上という課題に共通している。特に佐藤先生の“情報と人づくりを回す”という概念には、まさにこの課題が当てはまる。“モノから人へ”と世の中が転じる時に、このコロナという出来事が発生した。今こそ皆で“人へ”という時代の流れを真剣に考え、この難局を乗り越えていくことを提言し総括とする。

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