パネルディスカッション
「セルフメディケーションの推進
〜一般用医薬品が活用される環境とは〜」
テーマ説明
医療崩壊の危機が叫ばれる2025年問題を目前に控え、社会保障制度の継続に重要な役割を果たすセルフメディケーションの推進が加速しています。この6月には、調剤報酬改定により地域支援体制加算の施設基準に「一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売」が加わり、処方箋が中心だった調剤薬局においてもOTC医薬品販売の工夫や地域住民への積極的な関わりが課題となってきました。
変化が必要になるのは売る側だけでなく、国全体のセルフケア能力の底上げが必要であり、国民一人ひとりのヘルスリテラシー向上も急がれています。
本ディスカッションでは「一般用医薬品が活用される環境」について、アカデミア、ドラッグストア、メディアの専門的な視点からご講演いただき、その後のディスカッションでは、医師の視点から基調講演の相原一先生を交え意見交換を行っていただきました。
総括
相原先生のご講演の中で「多くの人は正しく点眼できていない」という、私たちの盲点ともいえる衝撃的な実態をご紹介いただきました。その上でOTC点眼薬を売る際に、実際にどうやって点眼しているかを引き出すような質問をし、そこから点眼指導に結びつけていくことが大切である。さらに患者の目の症状から、他の疾患が隠れている可能性も念頭に、店頭で声掛けすることで早期発見ができるのではないかとのご提案がありました。
河野さんからは、薬剤師が患者に一歩踏み込むということについて「医療職なのであなたの健康に関することを知りたいです」と堂々とした姿勢が大事である。実際に、同じチラシを配っても、日頃から情報共有をしっかりできている薬局はOTC購入者も多く、結局はかかりつけ機能の延長上にOTC販売があると述べられました。
杉浦先生からは、薬局からセルフケアを推進する上で、医療や介護との連携を含めた「健康なまちづくり」という未来像を見せていただきました。また海外のレベルには遠い日本の健康リテララシーの向上に関して、専門家としての薬剤師・登録販売者を育てることで貢献されている現状をご紹介いたただきました。
前野先生は、同じ薬でも「誰から買うか」が生活者にとって重要であり、日頃から信頼関係を築き、良い意味でお節介ができる人材の育成が必要であると述べられました。またヘルスリテラシーについても、自分の体験に結びついて初めて生きた知識として定着するものであるから、薬剤師との関わりからしっかり経験を通じて定着するよう、より能動的に関わることをご提案いただきました。
一般用医薬品が使われる環境づくり、その鍵をにぎるのは薬剤師であり、「まずは薬局に相談しよう」というアクションを生活者に定着させること、それが喫緊の課題だとディスカッションを通じて感じました。
慶應義塾大学薬学部 医療薬学・
社会連携センター 教授 山浦 克典 氏
パネルディスカッションの様子
参加者
【座 長】
山浦 克典 氏 慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 教授
【パネリスト(左から)】
相原 一 氏 東京大学大学院 医学系研究科 教授
河野 紀子 氏 日経ドラッグインフォメーション編集 副編集長
杉浦 伸哉 氏 スギホールディングス株式会社 取締役副社長
前野 哲博 氏 筑波大学 医学医療系 地域医療教育学 教授