シンポジウム

基調講演

セルフメディケーションに依存する点眼薬

 OTC医薬品は薬剤師・登録販売者が関与し、適正使用を確保する必要があり、国民側も表示、薬剤師・登録販売者の指示に従い服用するリテラシーが求められる。その中でOTC点眼薬は自ら点眼するという、内服とは異なる行為に基づくセルフメディケーションであり、その点では医療用点眼薬も同様である。また、点眼薬は主剤以外に様々な基剤が含有されて製剤化されている点も内服薬と大きく異なる。つまり、使用者による正しい点眼行為と、特に専門家も点眼薬の主剤のみならず基剤にも精通して指導することが重要である。
 OTC点眼薬は300種類ほど存在するがほとんどは眼精疲労軽減、CL装着、洗眼、さらにスイッチされた抗アレルギー薬やドライアイの薬剤である。基剤は同一効能でも製品によって異なり、また濃度も異なるため、主剤に対しての副作用のみならず基剤に対しても副作用が生じ得ることを知る必要がある。実際に、眼の不調を訴える患者の中には、自分が使っている薬の副作用であることを知らない人が多い。

点眼のリテラシーを向上させるには

 ほとんどの人が自己流で点眼していると思われる。特に問題となるのが、OTCで推奨する点眼方法と医療用医薬品の点眼方法が大きく異なっていることである。OTC点眼薬には1回3滴を5〜6回などと書かれているものが多いが、医療用医薬品はほぼ1滴であるため、市販の目薬との違いを十分に説明する必要がある。
 このような例として、慢性的に点眼によるセルフメディケーションに依存する緑内障での現実を紹介する。緑内障の治療の中心は眼圧を下げる点眼薬で、それでも進行が止まらない場合は手術という選択になる。そうした中、治療の成果が出ない患者を調べると正しく点眼ができていないケースが多く見られ、約半数の患者が「誤って目の外に点眼した経験がある」と答えたとの調査もある。
 特に中高年以上になると割合が高くなり、点眼指導によって眼圧が下がる患者も多い。以上は、緑内障の事例だが、OTC点眼薬使用者に対しても正しい点眼行為を啓蒙して、将来的に使用する可能性のある医療用点眼薬に対するアドヒアランスを上げることが重要な役割と考えるが、残念ながら使用方法の記載に関してOTCと医療用には相違がある。また点眼薬基剤には防腐剤という内服にはない成分が含有されているが、防腐剤はアレルギー以外に眼表面疾患を惹起しうるため注意喚起が必要である。

高齢化社会におけるアイケアの重要性とOTC点眼薬の役割

 眼疾患は現代の高齢社会において健康寿命と余命のギャップを生じる重要な疾患群に大きく関与することを知っていただきたい。社会活動に影響を与える目の不調や眼疾患(ドライアイ、白内障、加齢黄斑変性、緑内障)に対しては、身近な薬局・薬店でのアドバイスが有効と考える。

 加齢や疾病と共に生じるアイフレイル状態を改善するために、スイッチOTC医薬品の普及で眼疾患への正しい知識を増やすことはもちろん、OTC医薬品の使用の際に正しい点眼行為を身につけ、また手に取った際に、主要な眼疾患へ関心が向くような機会を提供することが今後のOTC医薬品の役割と考える。

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