シンポジウム

パネルディスカッション

「適切なセルフメディケーションの推進
~一般用医薬品の更なる活用 ~ 」

テーマ説明

 現在、国は、国民のセルフメディケーションを推進するため、電子版おくすり手帳等による服薬情報の一元管理、OTC薬のネット販売の緩和、スイッチOTC薬の活用促進を進めるセルフメディケーション税制など、さまざまなサポート体制強化に取り組んでいる。
また本年(令和7年)の薬機法改正により「健康サポート薬局」が「健康増進支援薬局」として認定制度に移行され、積極的に地域住民のセルフメディケーション推進に取り組む薬局の増加が期待される。一方で、国民のヘルスリテラシーの向上についてはまだ途上にあり、これらの制度を十分に活用するに至っていない。
 2025年問題に直面する今、国民を巻き込んでセルフケア・セルフメディケーションを進展させるために、現場では何が足かせになっているのか、どのような課題を克服してゆくべきか。シンポジウム後半のパネルディスカッションでは「適切なセルフメディケーションの推進〜一般用医薬品の更なる活用〜」をテーマに、関連する専門家の視点から取り組むべき課題を共有する。

総括

 ディスカッションでは、主に薬局発信のアドバンテージをどのように生かすべきかに焦点が当てられ、健康全般の相談窓口としてのニーズ(医薬連携・受診勧奨の判断等)、予防的ニーズ(適切な検査キット等の活用)、オーバードーズ(過剰摂取)を含めた医薬品適正使用に対する監視機能としての役割などが論点となった。
 なかでもオーバードーズの問題に対しては、SNSを介した若者への急速な広がりが指摘された。今後は、薬の一元管理のもと、用量を超える購入が疑われたら規制がかかるような制度の構築が急がれると同時に、孤独・孤立、依存症の相談窓口として薬局が機能すること、さらに国家資格者として「売らない」と言える薬剤師の重要性が示唆された。
 地域の病院・診療所との連携については、薬局からの受診勧奨だけでなく、一人の患者に対する服薬フォローアップも協働できるのではないか。服薬管理指導料、薬剤管理指導料の加算もあるので、トリプルワーミー(急性腎障害発生リスク)をはじめ、他科受診が引き起す副作用の防止に関しても、積極的な情報共有を行うことが望まれる。
 現状、セルフメディケーション推進のネックとなっている背景として、医療保険が適応される医療用医薬品と保険でカバーされないOTC薬の負担額の差という制度上の課題が残る。今後は皆保険制度持続には何が必要かとの視点でOTC薬の利用を広く国民に理解してもらうこと。同時に、薬局の利用価値をさらに高め、セルフケア・セルフメディケーションのさらなる推進をめざすことを共通認識としてディスカッションは終了した。


  • 慶應義塾大学薬学部 医療薬学・
    社会連携センター 教授 山浦 克典 氏


  • パネルディスカッションの様子
参加者

【座 長】
山浦 克典 氏 慶應義塾大学薬学部 医療薬学・社会連携センター 教授
【パネリスト(左から)】
椛島 健治 氏 京都⼤学⼤学院 医学研究科 ⽪膚科学教授 医学博⼠
河野 紀子 氏 日経ドラッグインフォメーション編集 副編集長
塚本 厚志 氏 ⼀般社団法⼈ ⽇本チェーンドラッグストア協会 会⻑
⿅村 恵明 氏 東京理科⼤学 薬学部 薬局管理学 教授

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